睡眠不足は、なぜ、記憶の低下を招くのか?

過剰にβアミロイドが蓄積した脳(右)。赤色の部分がβアミロイドの蓄積を示している。そして、浅くて質がよくない睡眠時の脳波を描いている。βアミロイドの蓄積が見られない脳(左)は、深い睡眠パターンを示す脳波を描いている。
過剰にβアミロイドが蓄積した脳(右)。赤色の部分がβアミロイドの蓄積を示している。そして、浅くて質がよくない睡眠時の脳波を描いている。βアミロイドの蓄積が見られない脳(左)は、深い睡眠パターンを示す脳波を描いている。


睡眠を取らないと、なぜ、記憶力が低下するのでしょうか?


睡眠と記憶とβアミロイド蓄積の関連性をカリフォルニア大学バークレー校の研究者が調査しています。


記憶は、最初に短期記憶として海馬に格納され、その後、深睡眠期(ノンレム睡眠の一部)に生じる強い脳波がかかわることで、大脳新皮質(側頭葉)に移されて長期記憶になります。


しかし、内側前頭前皮質にアルツハイマー病のもととなるβアミロイドが蓄積していると、深睡眠を妨害し、記憶力を低下させるというのです。


研究を率いたマシュー・ウォーカー博士によれば、海馬に格納した短期記憶はUSBに一時的に格納したファイルのようなもの。ちょっとしたショックで消えたりします。


一方、長期記憶はパソコンのハードディスクに格納したファイルと同じで、安全に長くファイルを保存することができます。


多量のβアミロイドが内側前頭前皮質にあると、深睡眠ができなくなり、海馬から大脳新皮質へのファイルの移動が行われなくなるのです。


ファイルがUSBに保存されたままで、消えやすくなる、つまり、物忘れするようになるのです。


研究では、神経画像処理技術(PETとfMRI)と脳波記憶法(EEG)を使って被験者の脳を観察しています。


睡眠前の被験者に120の単語ペアを記憶させ、起床後に思い出させたところ、βアミロイドが少なくて睡眠が深い人は大脳新皮質を使って思い出し、βアミロイドが多くて睡眠が浅い人は、海馬を使って思い出すことがわかりました。


そして、海馬を使って思い出す人は、記憶力テストの結果がひどく悪かったのです。


海馬は記憶のコントロールセンターであり、記憶の保管場所としては一時預かり所です。


そのため、USBに格納したファイルのように、時間の経過(睡眠)とともに記憶が劣化してしまったのです。


昔のことは思い出せても最近の出来事は忘れやすい。それは、一時記憶から長期記憶への移行がうまくいっていないからだともいえます。


ウォーカー博士は浅い睡眠がβアミロイドを蓄積させるのか、βアミロイドが睡眠を浅くするのかわからないとしながらも、「記憶力が悪くなった高齢者や認知症患者にとって(質の良い)睡眠が新しい治療法になるだろう」とコメントしています。


βアミロイドは寝ている間に脳からデトックスされています。


深い眠りを心がけていれば、物忘れが少なくなりそうです。



photo credit: Tom Simpson Desperately we leaped upon him! via photopin (license)


参照:Poor sleep linked to toxic buildup of Alzheimer’s protein, memory loss